オンラインのインターナショナルスクールを調べていくと、必ず分かれ道に行き当たります。英国式(IGCSE・A Level)か、米国式(ハイスクール・ディプロマ・AP)か。学校名で比べているうちは気づきにくいのですが、この2つは「同じものの色違い」ではありません。資格の作り方も、1日の時間も、お金のかかり方も、根っこから違います。
先に結論を書きます。英国式は「科目を絞って、外部試験の点で勝負する」設計。米国式は「単位を広く積んで、日々の成績で勝負する」設計です。そして日本の家庭にとっていちばん効くのは、実はカリキュラムの中身ではなく時間帯でした。英国時間の午前9時は日本時間の17〜18時ですが、米国東部時間の午前9時は日本時間の22〜23時です。放課後に足せるのは前者だけです。この記事では、資格・時間・費用・進学の4点で、どちらがご家庭に向くかを正直に整理します。

オンラインインターの英国式と米国式、いちばん大きな違いは「資格の作り方」
両者の違いを一言でまとめると、点の取り方が違うということです。
英国式は、外部試験の成績そのものが資格になります。14〜16歳で IGCSE(国際版GCSE)を受け、16〜18歳で A Level を受ける。試験を実施するのは学校ではなく、ケンブリッジやピアソン・エデクセルといった試験機関です。つまり学校が生徒に点をつけるのではなく、外の機関がつけます。だから「どの学校で学んだか」より「何の科目で何を取ったか」が前に出ます。
米国式は、学校が認定した単位(クレジット)を積み上げて卒業証書(ハイスクール・ディプロマ)にします。成績はGPAとして日々の課題・小テスト・態度から積み上がり、より難しい科目を証明したい生徒がAP(Advanced Placement)を上乗せします。資格を出すのは学校自身なので、その学校がどの認定機関から認められているかが決定的に重要になります。たとえば Pearson Online Academy は、公式サイトのフッターに SACS CASI、Northwest Accreditation Commission、NCA CASI、Middle States という認定団体名をそのまま列挙しています。
この違いは、そのまま「途中で方向転換できるか」に効きます。英国式は科目を1つずつ足したり減らしたりできますが、米国式は卒業に必要な単位の総量が決まっているので、途中で学校を替えると単位の移行が論点になります。逆にいえば、米国式は1校で12年間を通す設計、英国式は必要な資格だけ取りにいく設計です。
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3つの違いを先に押さえる

この3つのうち、日本の家庭で最後まで効いてくるのは3番目です。カリキュラムの好みは変えられますが、時差は変えられません。
時差:日本の1日は、こう変わる
数字で見るといちばんはっきりします。日本標準時は協定世界時+9時間。英国は夏時間(BST)が+1時間、冬(GMT)が±0。米国東部は夏時間(EDT)が−4時間、冬(EST)が−5時間です。これを日本時間に直すと次のようになります。
| 現地の時刻 | 英国式の学校(英国時間) | 米国式の学校(米国東部時間) |
|---|---|---|
| 朝9:00 | 日本時間 17:00(夏)/18:00(冬) | 日本時間 22:00(夏)/23:00(冬) |
| 正午12:00 | 日本時間 20:00/21:00 | 日本時間 翌1:00/翌2:00 |
| 午後15:00 | 日本時間 23:00/翌0:00 | 日本時間 翌4:00/翌5:00 |
この表が、実質的な結論です。英国式の学校の「午前中」は、日本の放課後にきれいに乗ります。小学生には少し遅い時間もありますが、17〜19時なら現実的に回せます。一方、米国式の学校でライブ授業が必須だと、日本時間の深夜〜早朝になります。子どもの睡眠を削ってまで続けられる家庭は、まずありません。
ただし、ここには重要な但し書きがあります。米国式の学校の多くは、ライブ授業を必須にしていません。Pearson Online Academy のように、学習管理システム上で教材・課題・教員とのやり取りが進む非同期型なら、時差は問題になりません。つまり米国式を検討するときの質問は「アメリカの学校ですか」ではなく、「ライブ授業は必須ですか、任意ですか、何時からですか」です。ここを確かめずに入学すると、続かない理由が学習内容ではなく生活時間のほうから来ます。
アジア在住のご家庭なら、シンガポール・香港・マレーシア(UTC+8)は上の表から1時間引いてください。バンコク・ジャカルタ(UTC+7)なら2時間、シドニー(UTC+10/+11)なら1〜2時間足す計算になります。

費用の形も違う:同じ学校が両方を出している例で見る
為替や学校ごとの方針が混ざるので、費用の比較は難しくなりがちです。そこで、英国式と米国式の両方を1校で提供している Crimson Global Academy の日本向け公式サイトの実額を使います。同じ学校・同じ通貨・同じ年度なので、制度の違いだけが残ります。
| 区分 | フルタイム(年間) | 1科目・1単位あたり |
|---|---|---|
| IGCSE(英国式・14〜16歳) | ¥2,300,000(10科目) | 約¥230,000/科目 |
| A-Levels(英国式・16〜18歳) | ¥2,400,000(4科目) | 約¥600,000/科目 |
| US High School Diploma(米国式) | ¥2,090,000(公式表記で4.5単位) | 約¥464,000/単位 |
| US High School Diploma(6単位・Honours) | ¥2,720,000 | 約¥453,000/単位 |
出典:Crimson Global Academy 日本向け公式「学費」ページ(2026年9月時点)。1科目・1単位あたりの金額は、公表されているフルタイム料金を科目数・単位数で割った概算です。金額は改定される可能性があります。
ここから読めることが2つあります。ひとつは、英国式は段階が上がると1科目あたりの負担が跳ね上がるということ。この学校では IGCSE が1科目あたり約23万円なのに対し、A-Level は約60万円で2.6倍です。これは「科目を絞ったから高い」のではなく、A-Level のほうが1科目あたりの授業時間も指導の密度も大きいためです。英国式は高校段階で科目数が減るぶん、1科目の重みが増すと考えてください。
もうひとつは、米国式は単位あたりの単価が比較的そろっているということ。この学校では4.5単位でも6単位でも1単位あたり45〜46万円で、増やしても割安にはなりません。代わりに「何単位取るか」で総額を調整できます。なお、これはこの1校の料金表から言えることで、制度全体の性質ではありません。
なお、学校を変えると金額は大きく動きます。米国式でも Pearson Online Academy の高校段階は年 $8,250(2026年9月時点の公式表記。2026年9月18日時点の1ドル=約158円で約130万円)で、上の表の米国式より安くなります。「英国式だから高い/米国式だから安い」ではなく、学校ごとの設計の差のほうが大きいとご理解ください。英国式の学校を金額で横並びにしたい方は オンラインで英国式カリキュラムが学べる学校6校|学費の実額 を、米国式の料金表の読み方は Pearson Online Academyの学費と評判 をご覧ください。
日本から進学するとき、どちらが有利か
ここは断定を避けて、確かめ方をお伝えします。
日本の大学を受けるなら、論点は「大学入学資格」です。非一条校やオンライン校で学んだ場合、日本の高校を卒業した扱いにはなりませんが、文部科学省が示すいくつかのルートで大学入学資格が認められます。GCE A Level のような国際資格や、国際的な評価団体の認定を受けた学校の12年課程修了がそれにあたります。詳しい整理は インターナショナルスクール 高校の選び方|3タイプと大学入学資格を整理 にまとめました。いずれにせよ志望校ごとに受験資格を確認するのが確実です。大学の募集要項に書かれています。
海外大学を受けるなら、行き先で向き不向きが分かれます。英国の大学は A Level の成績で条件付き合格を出す仕組みが整っており、英国式が素直です。米国の大学は高校4年間のGPAと課外活動を総合的に見るため、米国式のほうが評価の形に合います。ただしどちらの国の大学も、もう一方の資格を受け付けないわけではありません。「不利になる」より「書類の準備が一手増える」と考えるのが実態に近いです。
オンラインで学んだ子の進学先がどうなるかは、オンラインで学んだ子は、日本の高校・大学に進めるのか でも扱っています。
2つの設計を1枚で見る

この表にも書いたとおり、私たち NIJIN GLOBAL ACADEMY は「外部試験の成績が資格になる」に×が付きます。2027年9月開校予定で、どの外部資格に接続するかは現時点で確定していないからです。ここを伏せたまま他校を比べるのは筋が通らないので、同じ基準で並べました。私たちが引き受けているのは、資格そのものではなく日本の学校に通いながら英語で教科を学ぶ時間をつくることです。
どちらを選ぶか、3つの質問で決まる

この3つに答えれば、たいていは片方に寄ります。「17〜19時なら回せる・2〜4年後に資格が必要・得意科目を伸ばしたい」なら英国式。「深夜は無理だから非同期でよい・12年間を1校で通したい・幅広く学ばせたい」なら米国式。
そして3つとも「まだ分からない」なら、決めないという選択が正解です。日本の学校に籍を置いたまま、英語で教科を学ぶ時間だけを先に足しておく。資格の選択は、お子さんが何を得意になるか見えてからでも遅くありません。この形の具体像は 学びのしくみ に、制度面は インターナショナルスクールと就学義務の関係 にまとめています。
よくあるご質問
英国式と米国式、日本で評価が高いのはどちらですか?
どちらが上ということはありません。日本の大学入試では、そもそもどちらの資格であっても「大学入学資格を満たしているか」が最初の関門で、そこを越えれば学力試験や書類で評価されます。ブランドではなく、募集要項の受験資格欄を見てください。
途中で英国式から米国式に変えられますか?
変えられますが、コストがかかります。米国式は卒業までの単位総数が決まっているため、移行時に単位がどこまで認められるかが学校判断になります。逆に米国式から英国式へ移るときは、IGCSE や A Level を科目単位で受け直す形になります。高校段階(15歳以降)で乗り換えるほど、失うものが大きくなります。
ライブ授業がない学校でも資格は取れますか?
英国式は取れます。IGCSE・A Level は外部試験なので、学校が試験を実施するわけではないからです。ただし受験会場を自分で探す必要がある学校が多い点に注意してください。日本から受ける手順は IGCSEはオンラインで取れる?日本から受験する手順 にまとめています。米国式の非同期型は、学校が単位を認定するので卒業証書は出ますが、その学校の認定団体名を必ず確認してください。
日本の学校を辞めずに、どちらかを足すことはできますか?
できます。多くのご家庭は地元校に籍を残したまま併用しています。時間帯の相性から、放課後に足すなら英国式のライブ授業か、時間を選ばない非同期型が現実的です。出席の扱いは在籍校と自治体の判断で差がありますので、先に担任・管理職と話してください。ほかの選択肢も含めた全体像は 高校からの進路を広げる7つの選択肢 にあります。
制度を選ぶ前に、1日を選ぶ
英国式か米国式かという問いは、カリキュラムの優劣の話に見えて、実際には「わが家の平日の何時に、この学びを置けるか」という問いです。そこが決まれば、資格の形も費用の形も、後からついてきます。逆にそこを決めずにカリキュラムだけで選ぶと、3か月で時間割が破綻します。
そして、いま決めきれなくても構いません。資格を選ぶのは高校段階で十分間に合います。その前にできるのは、英語で考える時間を、無理のない場所に置いておくことです。
NIJIN GLOBAL ACADEMY は2027年9月開校(予定)、2027年4〜5月にプレ開校(体験クラス)を予定しています。私たちも、カリキュラムより先に「日本の平日のどこに置くか」から設計しました。日本の学校に通いながら、少人数の対話を中心に英語で教科を学ぶ。時間割が決まり次第、メールでお届けします。
制度を今日決める必要はありません。決めるのは、まず時間です。
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