「うちの子、自分に自信がないみたい」——テストの点や順位が返ってくるたび、お子さんの表情が少しずつ硬くなっていく。そんな場面に胸が痛くなったことはありませんか。脱偏差値の教育と自己肯定感の関係について、結論から言えば、自己肯定感は「たくさん褒めれば上がるもの」ではなく、子どもが自分を測る「ものさし」が1本しかない環境で下がりやすくなると考えられています。偏差値は受験という場面ではきわめて合理的な道具です。問題は指標そのものではなく、それ以外の評価軸を子どもが持てないまま10年近くを過ごしてしまうこと。この記事では、日本の子ども・若者の自己肯定感を公的な調査データで確かめたうえで、「脱偏差値」の教育が自己肯定感にどう関わるのかを、研究をふまえて慎重に整理します。そして、日本の学校を辞めずに「もう1本のものさし」を足す現実的な方法までご案内します。

「自分に自信がない」の正体——ものさしが1本しかない、という構造
まず、感覚ではなくデータから見てみましょう。こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」(2023年11〜12月実施、日本・アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデンの13〜29歳、各国およそ1,000サンプル)によると、「私は、自分自身に満足している」に肯定的に答えた日本の若者は57.4%。他の4か国はいずれも7割以上でした。さらに注目したいのは内訳で、迷いなく「そう思う」と答えた層は16.9%にとどまります(出典:こども家庭庁「こども・若者に関する調査研究等」)。一方で、この57.4%という数字は前回の内閣府調査(平成30年度・45.1%)から12.3ポイント改善しており、状況は少しずつ良い方向に動いていることも同時に押さえておきたい事実です。
年代を高校生に絞ると、傾向はより鮮明になります。国立青少年教育振興機構「高校生の心と体の健康に関する意識調査——日本・米国・中国・韓国の比較——」(2018年3月公表)では、「私は価値のある人間だと思う」に肯定的だった日本の高校生は44.9%で、米国・中国・韓国はいずれも8割台でした(出典:国立青少年教育振興機構 調査研究)。日本の高校生が他国より能力が低いわけでは、もちろんありません。
それは学力調査を見れば明らかです。OECD生徒の学習到達度調査(PISA2022、2023年12月公表)で、日本の15歳は数学的リテラシー・読解力・科学的リテラシーのいずれもOECD加盟国トップクラスでした。「学校の一員だと感じている」と答えた生徒も85.4%(2018年比+6.4ポイント)と改善しています。ところが同じ調査で、「自律学習に対する自己効力感」の指標値は−0.68、OECD加盟37か国中34位。「自力で学校の勉強をこなす」ことに自信がない生徒は58.4%にのぼりました(出典:文部科学省「PISA2022のポイント」)。
ここに、いまの日本の子どもが置かれた構造が見えてきます。学力は世界トップ級。学校の居心地も改善している。それでも「自分は自分で学んでいける」という手応えだけが薄い。評価がいつも外から与えられ、しかもその評価軸が「上か下か」の一本道であるとき、子どもは自分の価値を「今どのあたりにいるか」でしか語れなくなっていきます。あなたのお子さんが自信を失っているように見えるとしたら、それは性格の問題ではなく、ものさしが1本しかない環境の問題かもしれません。

「偏差値をなくせばいい」で終わらない——いまの打ち手が届きにくい理由
ここで大事なことを、はっきり書いておきます。偏差値という指標そのものは、悪者ではありません。集団の中での位置を客観的に示す統計的な道具であり、限られた席を公平に配分する入試という場面では、これ以上ないほど合理的に機能してきました。受験を頑張ることも、志望校を目指すことも、まったく否定される話ではありません。
そして日本の学校も、すでに変わりつつあります。小中学校の通知表は平成13年の指導要録改訂以降、集団の中での相対評価ではなく「目標に準拠した評価」——つまり、その子が学習指導要領の目標にどこまで到達したかを見る方式に改められています(出典:文部科学省「学習評価に関するQ&A」)。学校は敵ではなく、同じ方向を向いた仲間です。それでも中学受験・高校受験が近づけば、家庭の会話の中心は再び偏差値に戻っていく。制度が変わっても、子どもの実感まではなかなか変わらないのが現実です。
では家庭でできることとして真っ先に思いつく「たくさん褒める」はどうでしょうか。ここは慎重に扱う必要があります。心理学の古典的な研究であるMueller & Dweck(1998年、Journal of Personality and Social Psychology 75巻)では、「頭がいいね」と能力を褒められた子どもは、努力やプロセスを褒められた子どもに比べ、失敗のあとに粘りや課題への興味を失いやすかったと報告されています(出典:Mueller & Dweck 1998・PubMed)。褒めること自体が悪いのではなく、「何を褒めるか」で意味が変わるということです。
さらに、自己肯定感を高めること自体を目的にする発想にも留保が必要です。教育心理学者の中間玲子氏は、自尊感情と心理的健康の関係を再検討し、周囲の環境や関係性への肯定的な感情に伴って経験される自己への肯定感——「恩恵享受的自己感」という概念を提起しています(中間玲子(2013)教育心理学研究 61巻4号)。自己肯定感は数値のように直接引き上げるものというより、安心できる関係性の中で結果として育つものと捉えるほうが、現実に近いのかもしれません。
そう考えると、既存の選択肢の物足りなさも見えてきます。塾や習い事は学力を伸ばす力がありますが、多くは成績という同じものさしをもう1本増やす形になりがちです。対面フルタイムのインターナショナルスクールは、順位で並べない評価や対話中心の学びに触れられる魅力的な環境ですが、日本国籍のお子さんが一条校でない学校に通う場合の就学義務の論点や、費用・通学の負担が重くのしかかります(インターに偏差値という数字が存在しない理由はインターナショナルスクールの偏差値を解説した記事、そもそもの制度や種類はインターナショナルスクールとは何かの記事で整理しています)。※費用・制度は2026年8月時点の公開情報です。最新は各公式でご確認ください。
第三の答え——日本の学校を続けたまま「脱偏差値の教育」を足す
そこで現実的なのが、日本の学校に籍を残したまま、放課後や週末にオンラインのインターナショナルスクールを併用する「ダブルスクール」という形です。学校を辞める・辞めないの二択で悩む必要はありません。今の学校生活はそのままに、順位をつけない評価軸を「足す」。加算の発想です。全体像はダブルスクールのご案内ページでご確認いただけます。
私たちNIJIN GLOBAL ACADEMY(NGA)は、2027年9月開校を予定するオンライン・インターナショナルスクールです。運営は、日本のオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」に900名以上が学ぶ株式会社NIJIN。特徴を4つ、正直にお伝えします。(1)就学義務クリア——お子さんは日本の学校に在籍し通い続けるので、進学ルートはそのままです。(2)費用——対面インターのおよそ5分の1を目指す設計です(金額は開校情報でご案内します)。(3)英会話ではなく「英語で教科を学ぶ」本物のインター。(4)脱偏差値——順位をつけず、少人数の対話を中心に「自分と世界を、好きになる」を育てます。学校としての考え方はNGAとはどんな学校かのページ、授業の進め方は学びのしくみのページでご覧いただけます。
脱偏差値と聞くと「評価をしない」「甘い」と受け取られがちですが、実際は逆です。順位をつけない代わりに、一人ひとりの言葉と考えを丁寧に扱い、プロセスに対してフィードバックを返す。少人数だからこそ「あなたはどう思う?」と全員に問える。答えが1つでない問いを英語で考え、自分の意見を言い、他の子の意見に驚く——その積み重ねの中で、子どもは「点数が何点か」とは別の座標で自分を語れるようになっていきます。前述のとおり自己肯定感は直接引き上げられるものではありませんが、安心して意見を言える関係性は、その土壌になり得ると私たちは考えています。
ここは正直に。NGAは日本の学校の代わりではありません。在籍はあくまで日本の学校に残す併用型です。校庭も、毎日顔を合わせる友だちも、学校行事も、日本の学校が担ってくれるもの。そして受験や偏差値そのものへの対策は、NGAの役割ではありません。また、バイリンガルは「簡単・すぐ」ではなく、英語で教科を理解できるようになるには年数がかかります。開校前で実績はこれからですが、脱偏差値の対話型教育そのものはNIJINアカデミーで積み重ねてきたものです。


今日から始められる、3つのステップ
大きな決断はいりません。順番に、小さく始めるのがおすすめです。まずは家庭の問いを1つ変えてみること。「何点だった?」に加えて「どこが面白かった?」「どうやって解いたの?」を足すだけで、結果ではなくプロセスを言葉にする習慣が生まれます。次に、学校の外に順位のない場を1つ持つこと。順位で語られない時間が週に一度でもあると、子どもは「ここでは自分は自分でいていい」という感覚を持ちやすくなります。そして、必要に応じて週1コマからの併用へ。負担が重ければ回数を減らす、様子を見ながら増やす。行きつ戻りつで構いません。

よくある質問
Q. 脱偏差値の教育を選ぶと、受験で不利になりませんか?
A. NGAは日本の学校や塾の代わりではなく、放課後や週末に「足す」併用型です。お子さんは日本の学校に在籍したまま通い続けるので、就学義務は通常どおり、受験や進学のルートもそのまま残ります。受験対策そのものは学校や塾が担い、NGAは順位で測らない学びの時間を担う——役割分担で考えていただくのが正確です。
Q. 順位をつけないと、努力しなくなるのでは?
A. 順位をつけないことと、評価やフィードバックをしないことは別です。日本の小中学校の通知表もすでに集団内の相対評価ではなく、目標への到達度を見る「目標に準拠した評価」に改められています。またMueller & Dweck(1998)の研究では、能力ではなく努力やプロセスを認められた子どものほうが、失敗のあとも粘り強く取り組んだと報告されています。何を認めるかが、その後の頑張り方を左右する可能性があります。
Q. 英語がゼロで、いま自信をなくしている子でも大丈夫でしょうか?
A. NGAは日本語の支えを前提に、6〜18歳の子が少しずつ英語へ移っていける設計です。ただし英語で教科を理解できるようになるには年数がかかるのが現実で、そこは正直にお伝えします。自信をなくしているお子さんほど、いきなり成果を求めず、少人数で意見を聞いてもらえる経験から始めるのが安全です。まずは無理のない範囲で、様子を見ながら進めてください。
順位ではなく、その子の言葉で語れるように
あなたが本当に願っているのは、たぶん「偏差値をなくすこと」そのものではないはずです。お子さんが、点数や順位とは別の言葉で自分を語れるようになること。得意なことも苦手なことも含めて、自分をそこそこ好きでいられること。データが示すとおり、日本の子どもの自己肯定感は少しずつ改善しています。世の中は確かに動いていて、あなたの家庭がそこに一歩を足すことも、いつでもできます。急ぐ必要はありません。今日は「どこが面白かった?」と聞いてみるところから。そして、もう1本のものさしを足す準備が整ったときのために、ダブルスクールという選び方を頭の片隅に置いておいてください。
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