見学のあとに渡された、1枚の見積書。授業料、施設維持費、給食費、延長保育、そして送迎バス。ひとつずつは納得できる金額なのに、いちばん下の合計欄に目が行った瞬間、ペンを持つ手が止まる——インターナショナルスクールの幼稚園の費用を初めて具体的に見た日のことを、そんなふうに覚えている保護者は少なくありません。体験クラスで、お子さんはとても楽しそうだった。だからこそ、電卓を叩いている自分に、少し後ろめたささえ感じてしまう。
先に、いちばん大事なことをお伝えします。この段階で本当に確かめるべきなのは、今月の月謝を払えるかどうかではありません。プリスクールの月謝は払えても、小学校に上がった段階で費用が一段跳ね上がり、そこで進路を変えざるを得なくなる家庭が実際にあります。この記事では、幼稚園・プリスクールの費用が何でできているのかを分解し、公的な支援がどこまで届くのか、そしてその先に待っている段差をどう見極めるのかを、正直に整理します。相場の断定はしません。園によって、幅が本当に大きいからです。

インターナショナルスクールの幼稚園の費用は、何でできているのか
見積書が読みにくいのは、費用が1本ではなく、性質の違う3つの束でできているからです。ひとつめは毎月かかるもの——授業料(月謝)、施設維持費、給食費、教材費。ふたつめは入園のタイミングでまとまってかかるもの——入園金、入園検定料、施設拡充費や寄付金、制服やバッグ、教材の初期購入費。みっつめは使う人にだけかかるもの——延長保育料、送迎バス代、課外レッスン、遠足やイベントの実費です。パンフレットに大きく載っているのは、たいてい1つめだけです。
そしてインターナショナルスクールの幼稚園の費用は、園によって本当に幅があります。週2日の午前だけ通うクラスと、週5日フルデイで給食も延長保育もつくクラスでは、同じプリスクールという言葉でも、家計へのあたり方がまったく違います。だから、この記事では平均額を出しません。代わりにお願いしたいのは、見学のときに必ず年額でいくらになるのかを聞くことです。月謝だけを並べて比べると、入園金や施設費、バス代の分だけ現実とずれます。何がどの費目に含まれるのかはインターナショナルスクールの学費の内訳もあわせてご覧ください。

もうひとつ、インターナショナルスクールの幼稚園の費用で見落とされがちなのがこれから上がる分です。年度ごとの授業料改定、進級にともなう段階的な値上げ、外国人教員の採用にかかるコストの上昇。入園時の金額のまま卒園を迎えられるとは限りません。見学のときに「過去数年で授業料の改定はありましたか」と一言聞いておくだけで、数年先の見通しはずいぶん立てやすくなります。答えにくそうにする園もありますが、聞くこと自体は、失礼でも何でもありません。
無償化はどこまで届くのか——幼児教育・保育の無償化という支え
ここで知っておきたいのが、幼児教育・保育の無償化です。認可外保育施設等を利用する場合、3〜5歳児クラスは月額37,000円まで、住民税非課税世帯の0〜2歳児クラスは月額42,000円までが無償化の対象になります(こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化」)。3〜5歳児クラスなら、年額にして最大444,000円。決して小さな額ではありませんし、実際にこの制度があるからこそ通わせられている、というご家庭はたくさんあります。
ただし、ここが肝心です。対象になるには、その園が認可外保育施設として自治体に届出をしていることが前提になり、さらに保護者側が市区町村から保育の必要性の認定を受ける必要があります。加えて、施設が都道府県の指導監督基準を満たしているかどうかも要件に関わるため、届出の有無だけで判断しないでください。インターナショナルスクールのプリスクールには、届出をしている園も、していない園もあります。届出がなければ、どれだけ教育内容が充実していても対象にはなりません。また、無償化は上限までの補助であって、上限を超えた分と、給食費・行事費・バス代などの実費は自己負担のままです。
だからこそ、ネット上の情報や、他のご家庭の話をそのまま当てはめないでください。自治体が違えば運用も違います。確かめる手順はシンプルで、まず園に「無償化の対象になりますか、認可外保育施設の届出はされていますか」と直接聞くこと。そのうえで、お住まいの市区町村の窓口で認定の要件を確認すること。この2つだけで、見積もりの現実味はまるで変わります。使える制度の全体像はインターナショナルスクールで使える補助金・支援制度にまとめています。

本当の分かれ目は、小学校。費用はここで一段上がります
未就学のあいだは、無償化という支えがあります。けれどその支えは、小学校に上がった瞬間になくなります。幼児教育・保育の無償化は、あくまで就学前の制度だからです。同時に、日本にあるインターナショナルスクールの多くは、学校教育法第1条に定める学校(いわゆる一条校)ではありません。そのため、公立小学校の無償や就学援助、私立小学校向けの支援といった枠組みの外に置かれることが多く、義務教育の年齢は、公的な支えがいちばん薄い区間になります。制度上の位置づけはインターナショナルスクールとはで詳しく説明しています。
費用そのものも上がります。授業時間が長くなり、教科が増え、教員の体制も変わるからです。つまり支えが薄くなる地点と、金額が上がる地点が、同じタイミングで重なる。これがプリスクールから小学校への段差の正体です。年間費用が実際にどのくらいのレンジになるのかは、この記事で平均を出すより、通える範囲の学校の実額を見るほうがはるかに役に立ちます。学校ごとの公開情報を集めたインターナショナルスクール学費データベースで、候補校を実名で確認してみてください。小学校の段階から入る場合に何が変わるのかは小学校からインターナショナルスクールに入れるかで詳しく整理しています。

表にすると見えてくるのは、未就学のあいだは、費用の差が思ったほど開かないということです。無償化という支えが、差の一部を埋めてくれているからです。差が一気に開くのは小学校から。「今なら払えている」という感覚は、ご家庭の家計が強いからというだけでなく、制度が支えてくれているからでもあります。だからこそ、その支えが外れたあとの数字を、いま見ておく価値があります。
「続けられるか」を見極める、3つのステップ
段差の話をすると、不安になるかもしれません。けれど、先に知っていれば打てる手はあります。卒園間際に慌てて決めるのと、入園の時点で小学校の選択肢まで並べておくのとでは、家族の消耗がまるで違います。やることは3つだけです。

STEP 1は、1年ではなく12年で足すこと。卒園までの残り2年で考えると、たいていの家庭は「行ける」と判断します。そうではなく、小学校6年間、さらに中学・高校まで含めた総額を、ざっくりでいいので出してみてください。桁を見ておくだけで十分です。途中で公立に移る前提なら、それも立派な計画です。困るのは、計画がないまま12年目に入ってしまうことのほうです。
STEP 2は、これから上がる要素を先に書き出すこと。下のお子さんの入園が重なる年、進級による授業料の段階、年度ごとの改定、そして為替。海外から教員を招く学校では、円安が費用に効いてくることもあります。カレンダーに並べてみると、家計がいちばん苦しくなる年が具体的に見えてきます。分かっていれば、その年に向けて備えられます。分からないまま迎えるから、苦しくなるのです。
STEP 3は、やめる前提を先に決めておくこと。「ここまで来たら公立に戻す」という線を、ご夫婦で先に言葉にしておいてください。撤退ラインを決めるのは、諦めることではありません。むしろ、そこまでは迷わず走れるようにするための準備です。そして、やめることは失敗ではありません。園を出たあとも英語との関係を続ける方法はいくつもあり、通いながら別の学びを重ねるダブルスクールという形もあります。卒園後にどう続けるかはプリスクール卒園後の英語の続け方に整理しました。
第三の選択肢として——学び方の側から、段差を下げる
費用の段差は、家計を増やす以外にも、学び方の側から下げるという向き合い方があります。私たちの立ち位置も、正直にお伝えします。NIJIN GLOBAL ACADEMY(NGA)は、2027年9月に開校予定の脱偏差値のオンライン・インターナショナルスクールです。運営は株式会社NIJIN。日本最大級のオルタナティブスクールNIJINアカデミーには、すでに900名を超える子どもたちが在籍しています。
ただし、先に申し上げておかなければならないことがあります。NGAの対象は6歳から18歳で、未就学のお子さんの受け皿ではありません。いまプリスクールを探しているご家庭にとって、NGAは今日の答えにはなりません。私たちが関われるとしたら、それは小学校に上がるタイミング——まさに、この記事で書いてきた段差の地点からです。なお本開校に先立ち、2027年の春には体験クラス(プレ開校)を予定しています。校舎とスクールバスを持たないオンラインという形は、費用の構造そのものが通学型とは違います。学びは少人数の対話を中心に設計し、世界そのものを教材に、「自分と世界を、好きになる」ことを土台にしています。
そのうえで、向かないご家庭もあります。園庭で走り回る時間や、毎日の対面での関わりをいちばん大切にしたいなら、オンラインは物足りないはずです。生活リズムをつくる伴走も、ご家庭に一定の負担がかかります。他の選択肢と並べて公平に比べたうえで、合うと感じたときにだけ選んでいただければ十分です。そして、プリスクールで過ごした時間は、その後どの道を選んでも無駄にはなりません。
よくある質問
インターナショナルスクールの幼稚園の費用は、無償化の対象になりますか?
園によります。認可外保育施設として自治体に届出をしている園であれば、3〜5歳児クラスは月額37,000円まで、住民税非課税世帯の0〜2歳児クラスは月額42,000円までが対象になり得ます。ただし保護者側が市区町村から保育の必要性の認定を受ける必要があり、届出のない園は対象外です。制度の詳細はこども家庭庁の案内をご確認のうえ、必ず園と市区町村の両方に確認してください。
プリスクールと認可外保育園では、費用はどのくらい違いますか?
一律の答えはありません。同じ地域でも、通う日数、預かり時間、給食や延長保育の有無で大きく変わるからです。比べるときは月謝ではなく、入園金や施設費、バス代まで含めた年額で、しかも同じ通園条件にそろえて並べてください。そのうえで無償化の対象になるかを園ごとに確認すると、実際の負担額が見えてきます。金額だけでなく、預けられる時間帯が働き方に合うかも、同じくらい大切な比較軸です。
小学校からインターに入れるなら、プリスクールには通わせなくてもいいですか?
学校の方針によります。英語での授業についていける力を入学時点で求める学校もあれば、初学者向けの支援クラスを用意している学校もあります。志望校がある場合は、入学要件を早い段階で確認するのがいちばん確実です。費用の面から見れば、未就学期に無理をして家計を消耗させるより、小学校以降のために備えておくという選び方も、じゅうぶんに合理的です。
払えるかではなく、続けられるか。
インターナショナルスクールの幼稚園の費用を前にして手が止まったのは、あなたが慎重だからでも、覚悟が足りないからでもありません。いちばん大事な問いに、ちゃんと気づいたからです。今月払えるかではなく、この子が学び続けられるか。その問いを持てた時点で、あなたはもう、多くの家庭が数年後に直面する迷いを先回りしています。
NIJIN GLOBAL ACADEMYは2027年9月に開校予定です。校舎を持たないオンラインという形、少人数の対話を中心にした学び、そして1期生募集の情報を、メールでいち早くお届けします。今日、何かを決める必要はありません。ただ、小学校のその先にも道があることだけは、覚えておいてください。
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