「うちの県には、通えるインターナショナルスクールがない」。地図アプリで検索しても、出てくるのは県外の学校ばかり。片道2時間かけて送迎する現実味はなく、かといって仕事も家も手放して引っ越すわけにもいかない——そう感じているなら、この記事はあなたのために書きました。結論からお伝えします。地方の家庭の選択肢は「諦める」か「引っ越す」かの二択ではありません。日本の学校に籍を残したまま、放課後や週末にオンラインで国際教育を足すダブルスクールという第三の道があります。住む場所を変えずに、お子さんの世界だけを広げる方法を、公的データと制度の裏づけつきで整理します。

地方にインターナショナルスクールがないのは、あなたの調べ方が足りないからではない
まず知っておいてほしいのは、これは家庭の努力不足ではなく、日本の教育インフラの構造的な偏りだということです。国際教育の代表的な指標である国際バカロレア(IB)の認定校・候補校の公表一覧を見ると、その偏りははっきり数字に出ます。
文部科学省IB教育推進コンソーシアムが公表している一覧(2026年6月30日時点)では、日本国内の認定校・候補校は一条校95校、非一条校73校(このほかに国外1校が別掲)。当編集部がこの一覧を都道府県別に数え直したところ、最多は東京都の40校で、全体のおよそ4分の1が東京都に集中していました。一方で、認定校・候補校が1校もない県が19県あります(岩手・秋田・山形・福島・栃木・千葉・新潟・富山・福井・三重・和歌山・島根・山口・徳島・愛媛・佐賀・長崎・大分・宮崎)。
偏りの理由は、学校がつくられてきた経緯にあります。外国の学校制度にもとづく学校は、外国人の家庭がまとまって暮らす地域に、その必要から建てられてきました。たとえば文部科学省「我が国において、外国の高等学校相当として指定した教育施設一覧」(2025年3月26日現在)に載る現行の指定施設は、その多くが在日ブラジル人コミュニティ向けの学校で、所在地も茨城・群馬・埼玉・東京・神奈川・山梨・長野・岐阜・静岡・愛知・三重・滋賀に限られています。外国人が多く暮らす都市部や製造業の集積地には学校ができ、それ以外の地域にはそもそも選択肢が用意されてこなかった——インターが「ない」のは、そういう構造の結果です。
そもそもインターナショナルスクールとは何なのか、日本の学校と何が違うのかを整理したい方は、インターナショナルスクールとは?の基礎解説もあわせてお読みください。また、お住まいの県にどんなスクールやプリスクールがあるかは、県別の一覧記事でも確認できます(例:青森県/秋田県/福井県/宮崎県)。ただし、幼児向けのプリスクールや英語教室はあっても、小学生以降に英語で教科を学び続けられる学校となると、地方では一気に選択肢が細るのが実情です。

これまでの選択肢が、地方の家庭にとって難しい理由
地方でインターナショナルスクールを探した家庭が、たいてい行き着く選択肢は次の4つです。それぞれに良さがあり、同時に地方特有の壁があります。
1. 教育移住する。いちばん確実な方法です。実際に、子どもの教育を軸に東京や大阪、福岡、沖縄へ移る家庭もあります。ただしその代償は小さくありません。共働きの仕事、住宅ローン、祖父母との距離、きょうだいの転校、そして単身赴任という形になった場合の家族の分断。移住そのものは決して悪い選択ではありませんが、「学校のために家族の生活全体を組み替える」という判断は、誰にでもできるものではありません。移住のハードルと、移住せずに国際教育を得る考え方については引っ越さずに国際教育を受ける方法で詳しく扱っています。
2. 越境通学する。県境を越えて都市部のインターへ通う方法です。低学年のうちは保護者の送迎が前提になり、往復の時間がそのまま家族の可処分時間を削ります。数年続けられるかを冷静に見積もる必要があります。
3. 英会話教室・オンライン英会話に通う。手軽で、地方でも始められます。ただしここには決定的な違いがあります。英会話は「英語を学ぶ」時間であり、インターナショナルスクールは「英語で学ぶ」場所です。週1回25分の会話練習で、算数や理科、社会の概念を英語で考える力は育ちません。お子さんが将来ほしいのが「英語が話せる自分」ではなく「英語で世界とつながって考えられる自分」なら、この差は年々開いていきます。
4. 地元の公立校の国際コースを待つ。自治体によっては英語教育に力を入れた学校もありますが、通学圏に必ずあるとは限らず、開設時期も家庭の側では選べません。「いつか来るかもしれない機会」を待っている間に、お子さんの小学生時代は終わってしまいます。
第三の道:住む場所を変えずに、国際教育を「足す」
ここで提案したいのが、日本の学校をやめる引き算ではなく、日本の学校に通いながら国際教育を足すという考え方です。昼間はこれまでどおり地元の小中学校に通い、放課後や週末にオンラインのインターナショナルスクールで学ぶ。これがダブルスクールです。
この形がとくに地方の家庭に向いている理由は、制度面の安心にあります。文部科学省は、日本国籍の子どもを一条校として認められていないインターナショナルスクールに就学させても「法律で規定された就学義務を履行したことにはなりません」との見解を示しています(文部科学省)。対面のフルタイムのインターに転校する場合、この就学義務や、その後の公立中学への進学ルートが必ず論点になります。一方でダブルスクールは、お子さんの籍は地元の学校に残したまま。就学義務も進学ルートもそのまま維持されます。地方の家庭にとっては、「地域の友だちとの関係を切らずに済む」という日常的な安心も大きいはずです。
そして、通学が発生しないぶん費用の構造も変わります。校舎・スクールバス・施設維持といったコストが乗らないため、オンラインのインターは対面型より現実的な水準に収まりやすくなります。NIJIN GLOBAL ACADEMY(NGA)も、対面インターの約5分の1の学費水準を目指しています。費用面の不安がある場合は、自治体や制度による支援の可能性も含めてインターナショナルスクールの費用と補助の考え方で確認しておくとよいでしょう。
もうひとつ、地方の子どもにとって見逃せない価値があります。それは「比べられない場所」を持てることです。地域の学校では、どうしても同じ物差しでの順位や成績がついてまわります。NGAは順位をつけず、少人数の対話を中心に学びます。学校とは違うもうひとつの居場所で、自分の意見が英語で受け止められる経験は、お子さんの自己肯定感を静かに支えてくれます。

正直にお伝えすると、オンラインには対面にかなわない部分もあります。校庭で走り回ること、同じ教室の空気を共有すること、放課後にそのまま公園へ行くこと。これらはオンラインでは再現できません。ただ、その部分は地元の学校がすでに担ってくれている——ここがダブルスクールの本質です。地域の生活は地元の学校が、世界とつながる学びはオンラインが。役割を分けることで、どちらも諦めずに済みます。

地方の家庭が、無理なく始めるための進め方
いきなり大きく変える必要はありません。地方の家庭ほど、小さく試して確かめる進め方が向いています。
最初にやるべきは、お子さんの1週間の余白を数えることです。習い事、宿題、部活、家族の時間。そのうえで、平日夕方に30〜60分、または土曜の午前をあてられるかを見ます。無理に詰め込むと続きません。次に、英語のレベルではなく「英語で何かを考えるのが楽しいか」をお子さんと一緒に確かめます。小学生からの始め方の具体像は小学生向けオンラインインターナショナルスクールの選び方にまとめています。
そして最後に、家族で話す時間を持ってください。地方では、祖父母や周囲から「そんなことをして意味があるのか」と言われることもあるかもしれません。そのときに説明できるよう、日本の学校はやめないこと、進学ルートは変わらないこと、足すだけであることを、あらかじめ家族の言葉にしておくと迷いが減ります。

よくある質問
Q. 地元の学校をやめる必要はありませんか?
ありません。NGAは日本の学校との併用(ダブルスクール)を前提にした設計です。お子さんの籍は地元の小中学校に置いたまま、放課後や週末に参加します。そのため就学義務は地元の学校で満たされ、中学・高校への進学ルートもこれまでどおりです。フルタイムの非一条校インターに転校する場合に生じる進学上の論点を、そもそも発生させない形になっています。
Q. 英語がまったくできない子でも参加できますか?
参加できます。NGAは日本語の支えを前提に、少しずつ英語の割合を増やしていく設計です。ただし正直にお伝えすると、英語で教科の内容を考えられるようになるには年単位の時間がかかります。数か月でバイリンガルになるという話ではありません。地方に住んでいて周囲に英語環境がないお子さんこそ、早く始めて長く続けることが結果的にいちばんの近道になります。
Q. 教育移住とどちらがいいのでしょうか?
ご家庭の状況によります。仕事や住まいを動かせて、対面の国際環境にお子さんを完全に置きたいなら教育移住は有力な選択肢です。一方で、仕事・家・地域のつながりを保ちたい、きょうだいの学校を変えたくない、まず子どもが本当に興味を持つか確かめたい——という場合は、引っ越さずに足せるダブルスクールから始めるほうがリスクが小さくて済みます。オンラインで数年続けてみて、そのうえで移住を選ぶ家庭もあります。順番は入れ替えられます。
※費用・制度・校数は2026年8月時点の公開情報です。最新は各公式でご確認ください。
住む場所で、子どもの世界の広さが決まらないように
地方にインターナショナルスクールがないという事実は、変えられません。それは供給の偏りであって、あなたの努力の問題でもなければ、お子さんの可能性の限界でもありません。変えられるのは、その事実を前にして家庭が持てる選択肢の数のほうです。
ふるさとの景色も、地域の友だちも、祖父母の近くで育つ時間も、手放さなくていい。そのうえで、画面の向こうにいる世界中の同世代と、英語で考えを交わす時間だけを足す。NIJIN GLOBAL ACADEMYは2027年9月に開校するオンラインのインターナショナルスクールで、実績はこれからです。それでも、住む場所によって子どもの世界の広さが決まってしまう現実を、少しだけ動かしたいと考えています。
いま決めなくてかまいません。ただ、選択肢が二択ではなかったということだけ、覚えておいてください。
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