「IBやIGCSEは、オンラインで取れるのだろうか」——検索窓にその言葉を入れたあなたに、先に結論をお伝えします。ケンブリッジのIGCSEは、認定校に通っていなくても個人受験(private candidate)という制度で取得できます。一方、国際バカロレア(IB)はオンラインでも「学校を通して」履修・登録する資格で、自宅から完結させられるのはIBが認めた提携校のルートに限られます。つまり「国際バカロレア オンライン」で検索して出てくるオンライン塾や家庭教師は、学びを支える存在であって、資格そのものを発行できるわけではありません。この記事では、IB機構・文部科学省IB教育推進コンソーシアム・ケンブリッジ国際の一次情報をもとに、2つのカリキュラムをオンラインで目指すときの現実的な道筋と、カリキュラム別の選び方を整理します。そして最後に、資格の前に多くのご家庭がつまずく「英語で教科を学ぶ力」をどう用意するかまでご案内します。
この記事でわかること
- 国際バカロレア(IB)をオンラインで取る2つのルートと、その条件
- IGCSEが「個人受験」で取れる理由と、日本での受験のしかた
- 日本国内のIB認定校の数と、地理的に選べない家庭が多い現実
- 資格を目指す前に用意しておくべき「英語で教科を学ぶ」土台の作り方

国際バカロレア オンライン取得を考えたとき、最初にぶつかる3つの壁
情報が錯綜しやすい分野なので、まず土台になる事実を3つだけ共有させてください。ここを知らずに検索を続けると、塾の広告と学校の情報が混ざって、判断がどんどん難しくなります。
壁1:IBは、個人で申し込める資格ではありません。 国際バカロレアのプログラムは、IB機構の認定を受けた学校(IBワールドスクール)で履修するのが基本です。ディプロマプログラム(DP)は文部科学省IB教育推進コンソーシアムによれば16歳〜19歳を対象とした2年間の課程で、6科目に加えて課題論文(EE・4,000語)、知の理論(TOK)、創造性・活動・奉仕(CAS)という3つの必修要件をこなし、45点満点中24点以上で資格が得られます。試験は年2回世界一斉で、日本の一条校では原則として3年次の11月。この一連の手続きを個人でIB機構に申し込む窓口は用意されていません。どこかの学校に在籍していることが前提だと考えてください。
壁2:オンラインで完結する道はある。ただし提携校を通ります。 IB機構は公式サイトで、オンライン教育に2つの機会を用意していると説明しています(DP online)。ひとつはPamojaが提供するオンラインDP科目で、これはIBワールドスクールに在籍する生徒が、自分の学校にない科目だけをオンラインで履修するための仕組みです。もうひとつがオンラインDPパイロット。2022年3月に始まった取り組みで、DPをまるごとオンラインで修了できます。IBは提携パートナーとして、Aoba-Japan International School、Dwight Global Online School、Eastwood Global、King’s InterHigh、OnWorld(Nazaret Global EducationとMontserrat School)、Scotch Global、SEK Education Groupを挙げており、希望する生徒はこれらのパートナー校に直接応募すると明記しています(Online DP pilot)。そしてもうひとつ大切な点。オンラインの生徒も、試験は提携する対面のDP校で受験します。評価方法も、最終的に得られる資格も、通学生とまったく同じです。
壁3:日本国内で「通える範囲に選択肢がない」家庭が多いこと。 IB教育推進コンソーシアムによると、IBの認定を受けた学校は令和8年6月時点で世界163の国と地域に約6,200校。国内のIB認定校等数は273校(令和8年6月30日時点・プログラム単位の集計)で、内訳はPYPが認定91校/候補36校、MYPが認定48校/候補10校、DPは認定80校/候補6校、CPが認定1校/候補1校です(IB認定校・候補校)。当社がこの一覧を学校単位で集計したところ、認定校は一条校95校・非一条校73校。最も多い東京都が40校で、全体のおよそ4分の1が東京に集中していました。一方で、認定校も候補校も1校もない県が19県あります(岩手・秋田・山形・福島・栃木・千葉・新潟・富山・福井・三重・和歌山・島根・山口・徳島・愛媛・佐賀・長崎・大分・宮崎)。オンラインを探している方の多くは、教育熱心だからというより、単純に近くに選べる学校がないから探しているのだと思います。

IGCSEはなぜ「オンライン向き」と言われるのか
ここが、IBとIGCSEの最も大きな設計の違いです。ケンブリッジ国際のIGCSEは、30年以上前に作られた14〜16歳向けの国際資格で、70以上の科目から自由に組み合わせて履修できます(Cambridge IGCSE公式)。DPのように6科目+コアをパッケージで一括して修めるのではなく、科目ごとに積み上げる設計です。
そして決定的なのが個人受験(private candidate)の制度です。ケンブリッジ国際は公式に、ケンブリッジ認定校に通っていない人、あるいはオンライン校として登録されたケンブリッジ校で学んでいる人が試験を受けたい場合、その人たちを個人受験者と呼ぶと説明しています(Private candidates)。受験するには、自国で個人受験を受け入れている試験センター(または公認の試験プロバイダー)を自分で探して登録します。手続き・費用・特別措置の相談はすべてケンブリッジ本部ではなくそのセンターと直接行う、というのが公式の案内です(How to register as a private candidate)。
日本にお住まいの方にとって朗報なのは、ケンブリッジ国際が公式に掲載している「個人受験を受け付けるブリティッシュ・カウンシルのオフィス一覧」に日本が含まれていることです。同じページには、ケンブリッジ校に通っていない人だけでなく、オンライン校として登録されたケンブリッジ校で学ぶ人も個人受験者として出願できるとも書かれています。オンラインで学び、試験だけ会場で受ける——という形が制度として想定されている、ということです。
ただし、良いことばかりではありません。公式に明記されている注意点を3つ。第一に、すべてのシラバスやオプションが個人受験に開かれているわけではありません。対象外となるシラバスやオプションがあり、可否は各シラバス文書で確認する必要があります。第二に、費用の構造が学校生とは違います。ケンブリッジへの支払いはセンターが行い、受験者はその実費に加えて、監督にかかる費用などをセンターに支払うよう求められる場合があります。金額はセンターごとに異なるので、必ず事前に確認してください。国際教育にかかるお金全般をどう軽くするかは、インターナショナルスクールの無償化・補助金で制度をまとめています。第三に、成績の再採点や不服申し立ては、登録したセンターを通してしかできません。独学で受けるということは、その分の段取りを家庭が背負うということでもあります。
オンライン塾・対面インター——いまある選択肢は、どこで止まるか
どの選択肢も否定するつもりはありません。ただ、構造上の得意・不得意ははっきりしています。
IB専門のオンライン塾・家庭教師の壁:資格を発行できないこと。 質の高いサービスは確かに存在しますし、DPの内部評価やTOKの書き方で行き詰まったときの支えとしては有効です。けれど、前述のとおりIBは学校を通して履修・登録する資格なので、塾に通ってもDPの受験資格そのものは生まれません。在籍する認定校が先にあって、その補助として塾がある、という順番です。
対面インターナショナルスクール(非一条校)の壁:就学義務と、費用。 ここは制度の話なので正確に書きます。日本国籍の子を一条校として認められていないインターナショナルスクールに就学させても、学校教育法第17条の就学義務を履行したことにはならない、というのが文部科学省の見解です。制度の全体像はインターナショナルスクールとは何かで解説していますが、フルタイムでの入学は進学ルートそのものを設計し直す決断になります。加えて学費は日本の私立とは桁が変わります。
一条校のIB校の壁:数と、場所と、選抜。 上で見たとおりDPの認定校は全国で80校。しかも高校段階では入学試験があり、多くは中学3年の時点で英語の力がある程度求められます。「行きたい」と思ったときには、もう準備期間が足りない——これが、実際にいちばん多い行き詰まり方です。
第三の答え:資格を取りにいく前に、「英語で教科を学ぶ」時間を先に足す
ここまで整理して見えてくるのは、IBもIGCSEも入口の条件が「英語で教科を理解し、英語で考えを書けること」だという事実です。DPは6科目のうち2科目は英語等で履修する必要があり、IGCSEも科目そのものが英語で出題されます。つまり本当のボトルネックは資格の申し込み方法ではなく、そこにたどり着くまでの数年間をどう設計するかにあります。
その数年間を、日本の学校を辞めずに確保する方法がダブルスクールです。日本の学校に通いながら、放課後や週末にオンラインでインターナショナルスクールの学びを併用する——という考え方で、就学義務は日本の学校でクリアしたまま、進学ルートも今の友だち関係もそのままにできます。
NIJIN GLOBAL ACADEMY(NGA)は、2027年9月に開校予定のオンライン・インターナショナルスクールです。運営は日本の株式会社NIJIN。学ぶのは英会話ではなく、算数・理科・社会などを英語で考える本物のインター型の授業です。順位や偏差値で競わせず、少人数の対話を通じて「自分と世界を、好きになる」ことを大切にしています。対象は6〜18歳。いきなり英語漬けにするのではなく、日本語の支えを前提に少しずつ英語の割合を増やしていく設計で、学費は対面インターナショナルスクールの約5分の1を目標にしています(開校前のため具体額は非公開です)。小学生がオンラインでインターの学びを受ける形についてはオンラインのインターナショナルスクール(小学生)にまとめました。
ここは誤解のないように書きます
NGAはIB認定校(IBワールドスクール)ではありません。ケンブリッジ国際の認定校でもありません。したがって、NGAでIBやIGCSEの資格を取得することはできません。NGAができるのは、その手前にある英語で教科を学ぶ力と探究の姿勢を育てることです。将来IB校やIGCSEを目指すお子さんにとっての助走路として使っていただく——それが私たちの正直な位置づけです。資格が必要な段階になったら、上で紹介した認定校やオンラインDPパイロットの提携校、あるいはIGCSEの個人受験へ進んでください。
そしてもうひとつ正直に。NIJINが運営するオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」には900名以上が在籍していますが、NGA自体はまだ開校前で、実績はこれからです。校庭を走り回ることも、教室で肩を並べる友だちも、オンラインには用意できません。そこは対面の学校のほうが優れています。だからこそ、どちらかを選ぶのではなく、役割を分けて両方持つのが現実的だと考えています。


オンラインでIB・IGCSEを目指すなら、この3ステップ
資料請求を増やす前に、順番を守ってください。逆にすると、時間もお金も無駄になりやすい領域です。
まず、ゴールから逆算する。どの国のどんな進路に出ていきたいのか、その時期はいつか。英国・欧州系の大学や、日本の国際系学部を含む幅広い進路を視野に入れるなら、科目を積み上げられるIGCSEからA Levelというルートが現実的です。総合的な探究の力を評価される選抜を狙うなら、DPのパッケージが効きます。資格は目的ではなく、行き先に合わせて選ぶ道具です。
次に、入口の条件である英語の土台を、先に数年分積む。IGCSEの標準的な対象年齢は14〜16歳、DPは16〜19歳。逆算すると、小学校高学年から中学前半のあいだに英語で教科を扱う経験をどれだけ積めたかが、そのまま選択肢の幅になります。週1〜2コマでかまいません。大事なのは量より種類です。
最後に、中学後半で、資格ルートと会場・締切を確定させる。DPなら候補となる認定校の入試日程を、IGCSEなら個人受験を受け入れる試験センターと、受けたい科目が個人受験に開かれているかをシラバス文書で確認します。ここは半年単位で締切が決まっている世界なので、思い立ってから動くと1年待ちになります。

※費用・制度は2026年8月時点の公開情報です。最新は各公式でご確認ください。
よくある質問
Q. 国際バカロレアは、オンラインだけで取得できますか?
できる場合がありますが、条件がつきます。IB機構は2022年3月にオンラインDPパイロットを開始し、DP全体をオンラインで修了する道を用意しました。ただし参加できるのはIBが選んだ提携パートナー校を通じてで、応募先も学校です。また試験は提携する対面のDP校で受験します。自宅で試験まで完結するわけではない、という点はおさえておいてください。なお、Pamojaのオンライン科目のほうは、すでにIB認定校に在籍している生徒が自校にない科目を補うための制度です。
Q. IGCSEは日本のどこで受験できますか?
ケンブリッジ国際は、個人受験を受け付けるブリティッシュ・カウンシルのオフィスがある国の一覧に日本を掲載しています。実際の日程・会場・費用・締切は年度やセンターによって変わるため、必ずブリティッシュ・カウンシルなど登録先のセンターに直接ご確認ください。あわせて、受けたい科目が個人受験に対応しているかを各シラバス文書で確認するのを忘れずに。ここを見落として、直前に科目を組み替えることになるご家庭が少なくありません。
Q. 英語がまだ弱いのですが、間に合いますか?
お子さんの年齢によります。教科を英語で理解して意見を書けるレベルの言語力は、数年単位で育つものだからです。ただ、これは「早く始めた家庭が勝つ」という話ではなく、いつ実を結ばせたいかを決めて、そこから逆算するという話です。中学生からでも、英語で教科を扱う時間を週に数コマ確保できれば、高校段階でIGCSEやDPを検討できる位置には十分たどり着けます。逆に、英会話だけを続けていると、そのレベルには届きにくい。「英語を学ぶ」と「英語で学ぶ」は別物だと考えてください。
Q. 日本の学校に通いながら準備できますか?
できます。むしろ、それがいちばん損の少ない進め方だと考えています。日本の学校に籍を置いたまま放課後や週末にオンラインで英語での教科学習を足す形なら、就学義務は日本の学校で履行したまま、進学ルートも維持できます。将来IB校を受験する、IGCSEを個人受験する、あるいは日本の高校に進む——そのどれを選んでも無駄にならないのが、この積み方の強みです。
選ぶべきは資格の名前ではなく、お子さんの数年間の設計です
ここまで読んで、思ったより制度が入り組んでいると感じられたかもしれません。その感覚は正しいです。IBは学校を通す資格、IGCSEは個人でも受けられる資格。ルートは違いますが、どちらも入口で求められるものは同じで、英語で考え、英語で書ける力です。
そして、その力は資料請求では手に入りません。近くに認定校がなくても、英語で教科を学ぶ時間そのものは、今日からでも足せます。日本の学校の良さ——友だち、行事、日本語で積み上げてきた思考の土台——を手放さずに、世界を少しだけ足していく。選択肢を「捨てない」ことが、いちばん強い準備です。
お子さんがどの資格を選ぶかは、数年先の本人が決めることかもしれません。それでも、選べる状態を用意しておくことは、今日の親にできることです。もし、その一歩を探しているなら、開校に向けた準備の様子をのぞいてみてください。
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