お子さんが学校に行けなくなった夜、あるいは「この学校のやり方はうちの子に合っていない」と感じた朝。海外の記事を読むと、ホームスクーリングという言葉が当たり前のように出てきます。日本ではどうなのか。「ホームスクーリング 日本」で検索して、このページにたどり着いた方も多いと思います。家庭を学びの場にして、親が主導して、子どものペースで進める。うちもそれができたら、と考えたことのある方は少なくないと思います。
でも日本語で検索すると、情報が急に濁ります。「日本でもできる」と書いてあるサイトと「違法になる」と書いてあるサイトが並んでいて、どちらの根拠も示されていない。だから決められない。
先に結論を書きます。日本に、ホームスクーリングという制度はありません。学校教育法は保護者に就学義務を課していて、家庭での学習を学校の代わりとして認める仕組みは用意されていないからです。ただし、それは「何もできない」という意味ではありません。在籍を学校に残したまま、自宅での学習を指導要録上の出席として認めてもらう道が、文部科学省の通知で明示されています。しかも要件は7つ、原文に書かれています。
この記事では、その7要件を原文から確認し、オンライン国際校で学ぶことと家庭で保護者が教えることの違いを整理します。どちらが優れているかという話はしません。制度上どこが違うのか、そしてご家庭の状況にどちらが当てはまるのかを見ていきます。

「ホームスクーリング」と呼ばれているものは、実は3つある
議論がかみ合わない原因は、ひとつの言葉で3つの違うものを指しているところにあります。制度上の位置がまったく違うので、まず分けてください。
1つめ、家庭で保護者が教える形。これが本来のホームスクーリングです。日本では学校の代わりとして認められていません。在籍は学校に置いたまま、長期欠席として扱われるのが実際の運用です。
2つめ、自宅でICT教材などを使って学ぶ形。ここに制度の道があります。後述する7要件を満たす場合、在籍校の校長の判断で、指導要録上の出席扱いにでき、学習の成果を評価に反映することもできます。
3つめ、オンラインの学校に在籍する形。教員がいて、授業があり、評価が出る「学校」です。ただし海外のオンライン校の場合、それ自体で日本の就学義務を満たしたことにはならないため、地元の小中学校に籍を残す形になります。就学義務の考え方はインターナショナルスクールと就学義務の関係、籍の実務は公立小学校に籍は残せる?実務と手続きにまとめてあります。
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自宅学習が「出席扱い」になる7つの要件
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)の別記2に、自宅でICT等を活用した学習活動を行った場合の出欠の取扱いが示されています。趣旨には「我が国の義務教育制度を前提としつつ、一定の要件を満たした上で」出席扱いにできると書かれています。要件は次の7つです(要約ではなく、原文の骨格をそのまま並べます)。
(1) 保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。
(2) ICT等を活用した学習活動であること。ICT(コンピュータやインターネット、遠隔教育システムなど)のほか、郵送やFAXも含まれます。
(3) 訪問等による対面指導が適切に行われることを前提とすること。対面指導は、学習支援や将来の自立に向けた支援などが定期的かつ継続的に行われるものであること。
(4) 学習の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること。民間事業者が提供する場合は、通知の別添3「民間施設についてのガイドライン(試案)」を参考に、その子に適切かを判断すること。
(5) 校長が、対面指導や学習活動の状況を十分に把握すること。対面指導に当たっている者からの定期的な報告、担任や保護者を含む連絡会などの方法が挙げられています。
(6) 基本的に、学校外の公的機関や民間施設で相談・指導を受けられないような場合に行う学習活動であること。
(7) 成果を評価に反映する場合は、学習の計画や内容が学校の教育課程に照らし適切と判断される場合であること。
この7つを読むと、制度の設計意図がはっきり見えてきます。鍵は(1)と(3)と(5)です。つまり、教材の良さや学習量ではなく、学校とつながり続けているか、人が定期的に会っているか、校長が状況を把握できているかで決まります。「良い教材を買ったので出席扱いにしてほしい」という順番では通りません。先に動かすのは学校との関係のほうです。
なお通知には、出席扱いの日数の換算について「学校や教育委員会が、対面指導の日数や学習活動の時間などを基準とした規程等を作成して判断することが考えられる」とあり、一律の基準は国から示されていません。前例のない学校でも、基準を作るところから相談できる、ということです。「ICT等を活用した学習活動」の例として、民間業者のICT教材、個別学習システム、教育支援センター作成の教材、学校のプリントや通信教育、そして在籍校の授業を自宅に配信して行う学習(同時双方向型・オンデマンド型)までが挙げられています。

家庭で教える形とオンライン国際校は、何が違うのか
7要件に照らすと、違いは「良い・悪い」ではなく、満たしやすい要件が違うという形で現れます。
家庭で保護者が教える形は、(1)の学校との連携と(3)の対面指導は工夫しやすい一方で、(4)の「計画的な学習プログラム」と(7)の「教育課程に照らして適切」を保護者だけで整えるのが重労働になります。教える内容の設計、進度の記録、評価の説明——本来は学校の専門業務です。これを家庭が全部背負う形は、続きません。加えて、同年代とのやりとりが生活から抜け落ちやすいという、制度の外側の課題もあります。
オンラインの国際校は逆です。教員による授業、カリキュラム、成績の記録があるので、(4)と(7)に出せる材料はそろっています。仲間とのやりとりもあります。一方で、海外校の場合は日本の教育課程と対応しないため、(7)を在籍校が判断しにくいという現実があります。時差の問題もあります。そして(1)がいちばんの壁です——学校とのやり取りが英語だけだと、在籍校の先生が状況を把握しづらく、連携が形になりません。
ここまで整理すると、7要件を素直に満たしやすい形が見えてきます。日本の学校に籍を置いたまま、日本語で在籍校と連携でき、かつ教員による授業と評価がある学びを足す形です。私たちが取っているのもこの設計です。日本の学校をやめる必要はありません。学び方の具体像は学びのしくみにまとめました。

在籍校と話すときの順番
7要件の順番は、そのまま動く順番になっています。
STEP 1:担任と管理職に相談する。要件の1番目が「保護者と学校との間に十分な連携・協力関係」です。ここが無いまま教材や学校を決めても、出席扱いの話は進みません。順番を逆にしないでください。
STEP 2:対面指導の形を決める。要件(3)は訪問等による対面指導を前提としています。誰が、どのくらいの頻度で会うのか。担任の家庭訪問か、スクールカウンセラーか、教育支援センターの職員か。ここを具体化します。
STEP 3:学習の計画を文書にする。要件(4)の「計画的な学習プログラム」に当たります。何を、どの順で、週に何時間進めるのか。紙にすると学校も判断しやすくなります。
もうひとつ、要件(6)も読み落とさないでください。出席扱いは「基本的に、学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けられないような場合」に行う学習活動が対象とされています。通える教育支援センターやフリースクールがあるなら、まずそちらの検討を求められる可能性があります。選択肢の全体像は学校が合わない子のための学びの場まとめと子どもが「学校に行きたくない」と言ったらにまとめてあります。

よくあるご質問
日本でホームスクーリングは違法なのですか?
「家庭で学ぶこと」自体が罰せられるという単純な話ではありません。制度上は、保護者に就学義務があり、家庭での学習を学校の代わりとして認める仕組みが用意されていない、という状態です。だから多くのご家庭は在籍を残したまま自宅で学ぶ形になり、その学習を出席として認めてもらう道を使います。断定的な「違法」「合法」の二択で語られている情報には、根拠の条文が付いているかを確かめてください。
出席扱いになると、成績はどうなりますか?
通知には、成果を評価に反映する場合、すべての教科・観点について観点別学習状況や評定を記載することが必ず求められるわけではなく、学習状況を文章で記述するなど、次年度以降の指導改善に生かす観点から適切に記載されるようにすること、と書かれています。通知表その他の方法で本人・保護者に成果を伝えることも考えられる、ともあります。
オンラインの国際校に入れば、学校に行かなくてよくなりますか?
いいえ。海外のオンライン校に在籍しても、それだけで日本の就学義務を果たしたことにはなりません。地元校の籍は残す形が基本です。そして出席扱いになるかどうかは、在籍校の校長が7要件に照らして判断します。学校側と話す前に「もう行かなくていい」と伝えてしまうと、あとの選択肢が狭まります。
学校が前例がないと言っています。
通知には、一律の基準は国から示していないが、学校や教育委員会において一定の基準を作成しておくことは必要であり、古い基準があれば見直すことも検討すべきだと書かれています。つまり基準が無いことは断る理由にはならず、作る対象だという立場です。この一文を添えて相談するだけでも、話の進み方が変わることがあります。
制度は「学校か、家庭か」の二択になっていません
日本にホームスクーリングという制度はない。これは事実です。でも制度が用意しているのは「学校に来るか、諦めるか」の二択ではありませんでした。籍を残したまま、自宅での学習を出席として認めてもらう道があり、その要件は7つ、原文に書かれています。しかも鍵は教材ではなく、学校との連携と、人が定期的に会うことでした。
いまお子さんが学校に行けていないなら、まず担任に一本相談してください。教材を探すより先です。そのうえで、英語で教科を学ぶ時間を足したいと考えているなら、日本の学校をやめずに足せる形を選んでください。
NIJIN GLOBAL ACADEMYは2027年9月開校(予定)、2027年4〜5月にプレ開校(体験クラス)を予定しています。日本の学校に籍を置いたまま、日本語でご家庭と連携しながら、英語で教科を学ぶ——その設計と1期生募集の情報を、メールでいち早くお届けします。急いで決める必要はありません。


