海外は、正直むずかしい。でも今の環境のままでいいとも思えない——そう考えて教育移住を国内で探し始めたあなたへ、先に結論をお伝えします。国内の教育移住は海外よりずっと現実的です。ビザも要らず、日本語も進学ルートも守られ、自治体によっては100万円単位の移住支援金まであります。ただし「どこへ移るか」で中身がまったく変わるのがこのテーマの難しさで、国際バカロレア認定校のある街と、公立の英語教育が手厚い街と、離島留学のある島とでは、手に入るものも失うものも別物です。この記事では移住先を制度ごとに公式情報で整理し、見落とされがちな費用の現実まで正直に書きます。最後に、移住しないまま国際教育だけを足す第三の選択肢にも触れます。移住そのものを否定する記事ではありません。
この記事でわかること
- 国内の教育移住が海外より現実的な理由(就学義務・日本語)
- 移住先の4つの型:IB認定校/英語教育に熱心な自治体/離島留学・山村留学/移住支援金
- パンフレットに載らない費用の現実
- 移住しなくても国際教育を足せる、第三の選択肢

教育移住を国内で考えるあなたが、本当に迷っていること
国内の教育移住を検討する方は、「今の学校が合っていない気がする」という切実さと、「でも家族の生活を全部動かすほどのことだろうか」というためらいの間で揺れています。海外のようにビザや帰国後の進路という大きな壁がない分、踏み出しやすく、そのぶん判断がぼやけやすいのが国内移住の難しさです。
まず制度面の不安はほぼ消えます。移り先も日本の学校(学校教育法第1条に定める、いわゆる一条校)ですから、就学義務の心配はありません。文部科学省は、日本国籍の子を一条校でないインターナショナルスクールに通わせても就学義務を履行したことにはならず、途中で日本の小中学校への編入学が認められない可能性が高いと明記しています(文部科学省)。国内の一条校へ移るかぎり、この論点は消えます。
日本語も同じです。海外移住では母語の維持が最大級の宿題になりますが、国内ならその心配はありません(海外も並行して検討中で日本語が不安なら、日本語を友達との対話で学べる姉妹サービス〈ともだちじゃぱん〉もあります)。海外と迷っている段階なら、まず教育移住の基礎ガイドで全体像をつかんでください。国内移住で本当に問われるのは、「どこへ移れば、何が手に入るのか」という一点です。

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国内の教育移住は4つの型に分かれる——公式情報で確かめる
「教育移住におすすめの街」という記事は数多くありますが、並ぶ自治体の選ばれている理由はそれぞれ違います。実際に検討される移住先は、次の4つの型に整理できます。
型1:国際バカロレア(IB)認定校のある地域へ移る。 国内のIB認定校等は273校(認定校・候補校の合計。内訳はPYP認定91校・MYP認定48校・DP認定80校・CP認定1校ほか、令和8年6月30日時点/文部科学省IB教育推進コンソーシアム)。大事なのは総数ではなく分布です。全国に広がってはいるものの実際には東京都に突出して集中しており(都内だけで約40校)、大阪府・神奈川県・静岡県・広島県などがそれに続きます。一方で一覧に認定校が1校も載っていない県が19県あり、県内に選択肢が見当たらないことも珍しくありません。IB目当ての国内移住は、実質的に特定の都市圏への移住になりがちです。なお市立札幌開成中等教育学校、神奈川県立横浜国際高等学校、広島県立広島叡智学園(大崎上島町)のように公立でIBを行う一条校も同一覧に掲載されています。公立IB校は選抜があり、全寮制なら寮費も必要です。
型2:公立の英語教育に力を入れる自治体へ移る。 学校を私立やインターに変えるのではなく、公立のカリキュラムが手厚い市へ移る発想です。代表例がさいたま市の「グローバル・スタディ」。2016年度から市立の全小・中学校で実施され、小学1年生から中学3年生までの9年間を一貫したカリキュラムで4技能を学びます。低学年は担任と外国語指導助手(ALT)、高学年は担任と専科教員が組んで指導します(さいたま市公式)。住民票を移すだけで公立校の授業として受けられるのが強みですが、内容は英語科の充実で、英語で算数や理科を学ぶインター型とは目的が異なります。
型3:離島留学・山村留学で「1年単位」から試す。 家族ごと引っ越さず、子どもだけ、あるいは親子で期間を区切って移る制度です。沖縄県公式が案内する離島留学では、南城市・久高小中学校(小6〜中3)、渡嘉敷村・渡嘉敷小中学校(小5〜中3)、竹富町・鳩間小中学校(小4〜中3)、久米島町・久米島高校が受け入れています(沖縄県)。長崎県の高校生の離島留学制度はコースの個性が際立ち、対馬高校の国際文化交流科(韓国語)、壱岐高校の東アジア歴史・中国語コース、奈留高校のE-アイランド・スクール(英語)、五島南高校の夢トライコース(不登校経験のある生徒向け)などがあります(長崎県公式)。山間部には山村留学があり、鹿児島県は県教育委員会が地区別に受け入れ市町村を案内しています(鹿児島県教育委員会)。受入形態(寮・里親・親子留学)や費用は市町村ごとに大きく異なるため、実施市町村の公式でご確認ください。
型4:移住支援金のある市町村へ移る。 地方創生移住支援事業では、東京23区から東京圏外へ移住し就業・起業等の要件を満たす場合に世帯100万円以内・単身60万円以内が支給され、さらに18歳未満の世帯員1人につき最大100万円が加算されます。対象は移住直前10年間で通算5年以上・直近1年以上、東京23区に在住または23区へ通勤していた方などで、申請は転入後1年以内です(内閣官房・内閣府「移住支援金」)。都道府県と市町村の共同事業のため、対象求人や上乗せの有無は自治体ごとに違います。
移住者が学校を選んで集まっている地域のリアルは沖縄の教育移住で、候補地にインターがない場合の考え方は近くにインターがない地方在住の選択肢で詳しく扱っています。
費用の現実:引っ越し代より重いのは、その後の毎月です
見積もりが甘くなりやすいのは引っ越し当日ではなく移住後の家計です。正直に4つ挙げます。
1. 初期費用。 家族分の運送費に加え、賃貸なら敷金・礼金・仲介手数料、持ち家なら売却や二重ローンの検討が乗ります。家具・家電の買い替え、車社会の地域なら1台目・2台目の自動車まで必要になることも。
2. 住居費が下がっても、生活費が全部下がるわけではない。 家賃が安くなる一方、車の維持費、暖房費(プロパンガスの地域は割高になりがち)、送迎の時間が積み上がります。
3. 配偶者の仕事と収入。 ここが最大の変数です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)では、都道府県別の賃金が全国計を上回るのはわずか4都府県です(厚生労働省)。多くの移住は世帯収入が下がる前提で設計する必要があります。リモートワークを続けられるなら、この論点は軽くなります。
4. 二重生活のコスト。 親の一方が都市部に残る形や、離島留学のように子どもだけが移る形では家が2つになります。家賃・光熱費が二重になるうえ、離島や山間部は運賃が高く、帰省の交通費が毎月のしかかります。年間の往復回数×交通費まで先に計算しておきましょう。
忘れやすいのが家族の心のコストです。転校は環境のリセットで、良い方にも悪い方にも振れます。それでも国内移住にはオンラインでは手に入らないもの——海と山、少人数の教室、地域の大人との関係——があります。移住は今も十分に価値のある選択肢です。
迷っている段階なら、まず学びの中身を見てみてください → オンラインでの学びのしくみを見る →

第三の選択肢:移り住まずに、日本の学校へ国際教育を足す
もし本当の目的が「英語で学べる環境」や「順位で測られない場所」であって、地方で暮らすことそのものではないのなら、移住は手段のひとつにすぎません。今は、もう一つの手段があります。日本の学校に籍を残したまま、放課後や週末にオンラインで国際教育を受けるダブルスクールという形です。
要点は4つ。日本の学校に在籍したままなので就学義務も進学ルートもそのままで、転校も引っ越しも要りません。対面のインターと比べて費用が約5分の1を目指す設計であること。英語を習うのではなく英語で教科を学ぶ授業であること。順位をつけない脱偏差値の少人数の対話であること。NIJIN GLOBAL ACADEMY(NGA)は、この形のオンライン・インターナショナルスクールとして2027年9月の開校を予定しています(運営は株式会社NIJIN。日本のオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」には900名以上が在籍)。まだ開校前ですので、実績はこれから積み上げる段階です。
これは移住の代わりではありません。移住してもオンラインの学びは途切れませんし、移住を見送っても学びは足せます。すでに移住しないと決めたご家庭は教育移住をしないという選択もどうぞ。

国内の教育移住を、失敗せずに進める3ステップ
ステップ1:目的を1行にする。 「英語で学べること」「自然の中で育つこと」「今の学校から離れること」。この3つは似ているようで、必要な移住先がまったく違います。ご夫婦で書き出して、ずれていないか確かめてください。
ステップ2:移住前に、必ず現地で確かめる。 多くの自治体にお試し移住や短期滞在の制度があります。学校見学、通学路、冬の寒さ、買い物、病院、そして働ける場所。季節の悪い時期に一度行ってみるのが、最も費用対効果の高い調査です。離島留学・山村留学は1年単位で試せるので、家族全員で動く前の助走になります。
ステップ3:引っ越さずにできる部分から始める。 目的が国際的な学びなら、その部分だけは今の住所のまま始められます。先に学びを試し、お子さんの反応を見てから移住の是非を判断する。この順番なら、移住が正解でも不正解でも損をしません。

よくある質問
Q. 国内の教育移住なら、就学義務や進学ルートは大丈夫ですか?
移り先が公立・私立を問わず一条校であれば、就学義務も進学ルートもそのままです。注意が必要なのは国内でも一条校ではないインターナショナルスクールを選ぶ場合で、日本国籍の子について就学義務を果たしたことにならないと文部科学省が示しています。ダブルスクールは日本の学校に籍を残す併用型なので、この論点は生じません。
Q. 英語が目的なら、英語教育に熱心な自治体へ移れば十分ですか?
「英語の授業時間を増やしたい」であれば十分に届きます。ただし公立の英語教育は英語という教科を学ぶ設計で、算数や理科を英語で学ぶインター型とは目的が違います。英語で教科を学ぶ環境が欲しいなら、IB認定校のある地域への移住か、オンラインでの併用が現実的です。なおどの道でも習得には年単位の時間がかかります。すぐにバイリンガルになる方法はありません。
Q. 移住支援金があるなら、費用面はむしろ得になりませんか?
要件に合えば大きな助けになります。一方で支援金は一度きりで、移住後の家計は毎月続きます。世帯収入が下がる可能性、車の維持費、二重生活の交通費まで含めて、少なくとも3年分の収支を並べてから判断してください。支援金は移住を決める理由ではなく、決めた移住を支えるものと考えると判断を誤りにくくなります。
「どこに住むか」で悩むあなたは、すでに動き始めています
国内の教育移住を調べているということは、あなたはもう今のままでいいのだろうかという問いに正面から向き合っている人です。それだけで、お子さんにとって十分に大きなことだと思います。
移住してもいい。移住しなくてもいい。日本の学校の良さ——給食も、運動会も、地域の友だちも——は手放さないまま、そこに世界を足していく方法があります。海や山を選ぶのも、住所を変えずに世界とつながるのも、どちらも同じくらい正しい親の決断です。
※費用・制度は2026年9月時点の公開情報です。最新は各公式でご確認ください。


