インターナショナルスクールで日本語が遅れる?本当のリスクと家庭でできる対策

「インターで日本語は遅れるのか」と書かれた記事のキービジュアル

「インターナショナルスクール 日本語 遅れ」。検索窓にその言葉を入れたとき、頭にあったのは抽象的な心配ではなく、具体的な場面だったのではないでしょうか。日本語で話しかけたのに英語で返ってきた。祖父母との電話が短くなった。日本語の本を差し出したら「読んで」と言われた。あるいは入学を考えていて、「英語は伸びても、日本語はどうなるんだろう」という不安がある——。

先に結論を。インターに通うと日本語が遅れることは、確かにあります。ただしそれは「必ず起きること」ではなく、「何もしなければ起きやすいこと」です。日本語は、意図的に守れます。この記事は、何を、いつまでに、どれくらいやればいいのかを決められるようにするための実務ガイドです。

自宅のリビングで、絵本とドリルを広げて親子で日本語の読み書きに取り組む様子
母語は、机の上の15分から守られます。量ではなく、続く形をつくることが大切です。
目次

インターナショナルスクールで日本語が遅れる——その実感は、気のせいではありません

まず正直に。「入学して2〜3年で家でも英語で返すようになった」「話すのは問題ないのに漢字と作文が学年に追いつかない」「教科書の文章題が読めない」——英語環境で学ぶ子の家庭で繰り返し起きていることです。

ただ、区別してほしいことがあります。最初に気づくのは「話す日本語」の変化ですが、長く尾を引くのは読み書きと、学年相当の国語の力のほうです。会話は使い続ければ戻ります。けれど漢字・語彙・読解・作文の力は、自然には育ちません(全体像はインターのデメリットへ)。

なぜ日本語が遅れるのか——日本語が「家の中だけの言葉」になるから

これは学校の質の問題ではありません。授業も友達との会話も英語である以上、日本語に触れる時間が減るのは構造上あたりまえで、日本語は「親と話すときの言葉」に縮んでいきます。だから学校を責めても解決せず、家庭が構造を理解して手を打つことでしか変わりません。

インターナショナルスクールで日本語が遅れる3つの構造を示した図。日本語が家庭内だけの言葉になる・会話の日本語と学年相当の国語は別物・読み書きは自然には育たない
日本語の遅れは学校の質ではなく、日本語に触れる時間と種類が減るという構造から生まれます。

会話の日本語と、学年相当の国語は、別の力

日常会話は状況の助けを借りて成立します。一方、教科書を読む・説明する・意見文を書く力は文脈の助けがない言葉を扱う力で、育つのに何年もかかります。「ペラペラ話しているから大丈夫」という判断がいちばん危ないのはこのためです。理論的な背景はダブルリミテッドセミリンガルの記事に譲ります。

もう一つ、読み書きは意図しないと積み上がりません。日本の小学校では学年別漢字配当表にもとづき6年間で1,026字の漢字を学びます(1年80字、2年160字、3年200字、4年202字、5年193字、6年191字)。足りないのは能力ではなく、時間と機会。だから対策も精神論ではなく時間の設計になります。

学年別に見る、日本語を守るための現実的な目安

その時期にいちばん失いやすいものを守る、と考えてください。

未就学〜小学校低学年(〜8歳ごろ)

守るべきは日本語を「使いたい言葉」にしておくこと。親は日本語で話し続ける(子が英語で返しても崩さない)、読み聞かせを毎日続ける、ひらがな・カタカナは入学の年齢までに一通り。この段階で「日本語=叱られる時間」にしないことが決定的です。

小学校中学年〜高学年(9〜12歳ごろ)

最大の分かれ目、いわゆる漢字の山です。3年で200字、4年で202字と量が増え、原因・結果・比較といった抽象語が教科の中心になります。ここを空白にすると、話せるのに教科書が読めない状態が固定化します。目安は毎日15〜20分の読み書きを、学年を区切って積むこと。漢字だけでなく、自分で読む時間と100〜200字書く時間も。

中学生以降(13歳〜)

量より深さに切り替えます。ニュースや小説について日本語で意見を交わす、日本語で調べてまとめる。抽象的な議論を母語でできることは、英語での思考の土台にもなります。この年代は本人の意思が結果を左右するので、なぜ日本語を続けるのかを本人と共有しておくことです。

学校まかせ・家庭だけ・組み合わせ——日本語はどこで守られるのか

インター生の日本語を守る3つのやり方を比較した表。学校まかせ・家庭だけでがんばる・学校と家庭と外部を組み合わせるを、話す聞く力の維持・漢字と読み書き・学年相当の読解と作文・帰国や編入への備え・家庭の負担の持続性の5観点で比較
学校まかせでも家庭だけでも穴が残ります。役割を分けて組み合わせるほど、無理なく続きます。

学校まかせでは、会話が保たれても学年相当の読解や作文には届きにくくなります。母語の授業を持つインターも増えていますが、内容も時間数も学校次第。「日本語の授業がある」で安心せず、週に何コマ・何を・どのレベルまで扱うのかを確認するのが学校選びの実務です。

一方家庭だけのやり方は、質は高くできても続きません。親が教師役を兼ねると、日本語の時間が緊張の時間に変わるからです。現実的なのは学校(英語と教科)・家庭(会話と習慣)・外部(読み書きの指導)で役割を分けること。親は教えるより、続く仕組みを設計する側に回るほうがうまくいきます。

今日から始められる、家庭の3ステップ

インター生の日本語を守る家庭の3ステップの図。日本語を使いたい言葉として守る・毎日15分の読み書きを学年で区切って積む・半年に一度外の目で学年相当かを確かめる
大切なのは量ではなく、続く形。まず土台、次に積み上げ、最後に外の目で確かめます。

1. 日本語を「使いたい言葉」として守る。親は日本語で話し続け、日本語の時間を叱る時間にしない。2. 読み書きを毎日15〜20分、学年を区切って積む。週末に2時間より、平日15分×5日のほうが確実に残ります。3. 半年に一度、外の目で学年相当かを確かめる。家庭の内側だけではゆるやかな遅れが見えません。第三者に見てもらえば、次の半年にやることが決まります。

近くに教室がなければオンラインという手も。日本語が不安なご家庭には姉妹サービス〈ともだちじゃぱん〉もおすすめです(NIJIN運営・子ども向けオンライン日本語)。

窓辺の机でオンラインの授業を受ける子どもと、少し離れたところから見守る親の様子
近くに教室がなくても、学年相当の読み書きを続ける形はつくれます。

補習授業校・就学義務——外部の選択肢と、制度のこと

補習授業校(文部科学省の在外教育施設)

海外にお住まいなら、現地校やインターに通う日本人の子のために、土曜日や放課後に日本の小・中学校の一部の教科を日本語で学ぶ補習授業校があります。文部科学省の公開情報によれば、世界51か国・1地域に242校が設置され(令和6年7月1日現在)、約2万1千人が学んでいます。国語を中心に、施設によって算数・理科・社会などが加わり、国内の教科書が使われます。海外へ移住される場合は教育移住と子どもの日本語もあわせてどうぞ。

日本国内でインターに通う場合の、就学義務との関係

日本のインターの多くは学校教育法第1条の学校(一条校)ではなく、各種学校または無認可です。このため一般に、日本国籍の子どもがインターに通う場合、就学義務を履行したことにはならないと説明されています。たとえば新宿区は公開ページで、日本国籍のみの場合は就学義務違反にあたり卒業しても区立中学校への入学は認められないため、事前に教育委員会へ相談するよう案内しています。重国籍なら、将来外国籍を選択する可能性が高く他に教育機会が確保されていると認められれば猶予・免除ができるとされ、外国籍のみなら手続きは不要です。

ただし自治体により運用が異なります。公立小に籍を置きつつインターに通う家庭もありますが、認められるかは自治体しだいです(ダブルスクールという選び方)。必ず教育委員会に事前相談を。

※制度・運用は2026年8月時点の公開情報です。最新は各校・お住まいの教育委員会にご確認ください。

帰国・編入のときに、実際に何が起きるか

日本語の遅れがいちばんはっきり表に出るのが、帰国や編入のときです。公立小・中への編入は住民票のある自治体の教育委員会が窓口で、学年は原則年齢相当ですが、日本語の力が著しく不足する場合は学校との協議になります。家庭だけで学年を決められるわけではありません。

つまずく箇所もほぼ決まっています。会話は問題ないのに、漢字・作文・読解、そして算数や理科の文章題。戻る可能性が少しでもあるなら、漢字と教科書的な文章に触れる時間だけは切らさない。給食当番や掃除といった学校文化の違いも負担になるので、そこも先に話しておくと着地がやわらぎます。

第三の選択肢——日本語を土台にしたまま、世界とつながる

ここまでが「英語のために日本語を犠牲にする」か「日本語のために国際的な学びをあきらめる」かの二択に見えたなら、それは違います。この二択は学校の言語がどちらか一つしか選べないという前提から生まれたものです(インターナショナルスクールとは)。

私たち NIJIN GLOBAL ACADEMY(NGA)が2027年9月の開校に向けて設計しているのも、その一つです。テストの点数で子どもを並べない脱偏差値のオンライン国際学校で、少人数で「あなたはどう思う?」から始める対話を中心に置いています。言語は日本語の支えを前提に、少しずつ英語に触れられる設計。「日本語は意図的に守る」という発想を、学校側に組み込む考え方です。

運営は株式会社NIJIN。国内のオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」には900名を超える子どもたちが在籍しています。対象はアジア・オセアニアの6〜18歳、学費は対面インターのおよそ5分の1を目指しています。正直に書けば、オンラインである以上、校庭や対面の行事は同じではなく、実績もこれからです。

よくある質問

インターに通わせたら、日本語が話せなくなりますか?

何もしなければ話す力が細ることはあります。学校でも遊びでも英語だと、聞いて理解はできるが自分からは話せない受け身の状態になりやすいためです。ただし家庭で使い続け、話す相手を確保していればかなり防げます。

日本語の読み書きは、何歳までにやるべきですか?

年齢で線を引くより、積み上げの順番で考えるほうが実務的です。ひらがな・カタカナは入学の年齢までに一通り、漢字は学年を飛ばさずに積む。とくに9〜12歳ごろを空白にすると、後から埋めるのが難しくなります。

補習校には必ず通わせるべきでしょうか?

必須ではありません。通える範囲にあることが前提ですし、土曜がまるごと埋まる負担もあります。大事なのは学年相当の読み書きを積む時間が確保されていること。手段は教室でもオンラインでも家庭学習でも構いません。

帰国して公立小学校に編入するとき、日本語で苦労しますか?

会話ができても、漢字・作文・読解、算数や理科の文章題でつまずくケースが多く見られます。窓口は住民票のある自治体の教育委員会です。

日本国内でインターに通うと、義務教育はどうなりますか?

日本のインターの多くは一条校ではなく各種学校等にあたるため、一般に、日本国籍の子どもの場合は就学義務を履行したことにならないと説明されています。国籍の状況で扱いが分かれ、運用も自治体により異なります。必ず教育委員会に事前相談を。

家庭で日本語をやろうとすると、子どもが嫌がって続きません

親が教師役を兼ねると起きやすい現象です。対策は二つ。量を減らすことと、指導の役割を家庭の外に出すこと。親は評価する人ではなく、日本語で一緒に笑う人でいるほうが日本語は残ります。

日本語は、お子さんが自分を語るための言葉です。

日本語の遅れを心配するとき、本当に守りたいのは漢字の数ではないはずです。祖父母と笑い合える時間、自分の気持ちを一番深いところまで言葉にできる感覚、「自分はここにつながっている」という手ざわり。それを失わせたくないから、心配になるのだと思います。

その願いは守れます。必要なのは完璧な計画ではなく、日々15分と、半年に一度の確認と、日本語を嫌いにさせない優しさだけ。英語と日本語は、対立しません。

NIJIN GLOBAL ACADEMYは2027年9月開校予定。日本語の支えを前提にした学びのしくみや、1期生募集の情報をメールでお届けします。

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